退職して国民健康保険(国保)に入ると、在職中に給与から引かれていた健康保険料より高い保険料の通知が届くことがあります。保険料は前年の所得で計算されるため、収入が減った直後ほど負担を重く感じやすくなります。ただし、届け出れば保険料を下げられる制度がいくつか用意されています。
この記事で分かること
- 退職後の国民健康保険料が、収入が減ったのに下がらない理由
- 会社都合の離職で使える軽減と、収入が減ったときに相談できる減免の違い
- 届出書の名前・添付書類・提出先・提出時期と、届け出る順番
この記事に出てくる言葉
- 非自発的失業者の軽減: 倒産や解雇などで離職した人の保険料を、前年の給与所得を30%とみなして計算する仕組み
- 減免: 特別な事情がある人の保険料を、申請によって減らしたり免除したりすること
- 低所得世帯の軽減: 前年の所得が基準以下の世帯の保険料のうち、均等割(加入者1人ごとにかかる部分)などを7割・5割・2割減らす仕組み
- 雇用保険受給資格者証: ハローワークで失業給付の手続きをした人に発行される書類で、離職理由のコードが書かれています
- 所得の申告: 確定申告や市・県民税の申告など、前年の所得を市区町村に知らせる手続き
退職後の国民健康保険が高いと感じるのは、最初の納入通知書が届いたときです
保険料の高さに気づくのは、国保に入ったあとで最初の納入通知書(保険料の金額と納期が書かれた通知)を受け取ったときです。在職中の健康保険料は、給与から毎月引かれていました。通知書を見て、在職中に給与から引かれていた健康保険料より高いと分かり、手が止まることがあります。そのとき確かめたいのは、離職の理由と、退職した年に入る収入の見込みです。
倒産・解雇・雇い止めで辞めて失業給付を受ける場合
会社の倒産や解雇、契約の雇い止めで辞めた人は、ハローワークで失業給付の手続きをすると雇用保険受給資格者証が発行されます。そこに書かれた離職理由のコードが対象の番号で、離職日に65歳未満であれば、保険料の軽減を届け出られます。
自己都合で辞めた人や、個人事業をやめた人の場合
対象のコードに当てはまらない人や、個人事業主・会社役員で受給資格者証がない人は、上の軽減は使えません。この場合は、今年度の所得が前年よりどれだけ減る見込みかを確かめ、市区町村の減免を相談します。広島市では、前年の70%以下になる見込みかどうかが判断の目安の一つです。
保険料が下がらないのは、前年の所得で計算される仕組みだからです
国民健康保険料は、退職した後の収入ではなく、前年の所得をもとに計算されます。
前年の所得が、保険料と軽減の判定の両方に使われます
国保では、前年の所得に応じて保険料を計算します。前年の所得は、低所得世帯の軽減の割合や、高額療養費(医療費の自己負担に上限を設ける制度)の限度額を決めるのにも使われます。そのため、退職した年の保険料は、在職中に給与を受け取っていた前年の所得で計算されます。退職翌年の住民税も前年の所得で決まるので、国保の保険料と同じ時期に負担が重なることがあります。住民税が払えないときの分割や徴収猶予(支払いを待ってもらう制度)は、退職翌年の住民税が払えないときの申請順で説明しています。
軽減と減免は、届け出た人だけに使われます
国民健康保険法では、特別の理由がある人の保険料を、市区町村が条例にもとづいて減免できます。保険料の支払いを待つ徴収猶予も認められています。非自発的失業者の軽減も、届出をした人が対象です。たとえば中野区では、前年の給与所得だけを100分の30に減らして保険料を計算します。新宿区の案内では、給与所得以外の所得は減らす対象にならないと書かれています。
届け出ないままにすると、保険料と医療費の両方で不利になります
軽減や減免は自動では適用されないため、何もしないと次のような不利益につながります。
- 前年の給与所得のまま保険料が計算され続けます。非自発的失業者の軽減は、届け出てはじめて給与所得を30%として計算し直すものです。
- 所得の申告がないと、低所得世帯の軽減が受けられないことがあります。広島市は、収入がない世帯であっても、申告がない状態では軽減措置が適用されないと案内しています。
- 減免の申請期限を過ぎてしまうことがあります。広島市では、減免の申請は納付期限の前日から数えて7日前までとされています。
- 滞納が続くと、督促状、延滞金(遅れた日数に応じて加わるお金)、差押え(預金や給与などを取り立てにあてる処分)へと進みます。広島市では、納付期限から1年を過ぎると、医療機関でいったん医療費の全額を支払うことになります。1年6か月を過ぎると、高額療養費などの支払いが一時差し止められます。
退職後の国民健康保険を下げる4つの方法
離職の理由と所得の見込みによって、使える方法が変わります。
会社都合などで離職したら「非自発的失業者の軽減」を届け出る
対象になるのは、次の条件をすべて満たす人です(中野区・新宿区・船橋市の案内による)。
- 離職日の時点で65歳未満であること
- 雇用保険の特定受給資格者(倒産・解雇などで離職した人)か、特定理由離職者(雇い止めなどで離職した人)であること
- 雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知の離職理由コードが、特定受給資格者の11・12・21・22・31・32、または特定理由離職者の23・33・34であること
軽減される期間は、離職日の翌日が属する月から、その月が属する年度の翌年度末までです。途中で別の健康保険に入った場合は、国保の資格がなくなる日までになります。
所得の申告をして、低所得世帯の軽減の判定を受ける
前年の所得が基準以下の世帯は、均等割などが7割・5割・2割減らされます。たとえば広島市の令和8年度の基準を見てみます。給与所得者等(給与収入が55万円を超える人など)が1人の世帯は、前年中の総所得金額等(所得の合計額)が43万円以下なら7割の軽減です。この判定は所得の申告にもとづくため、収入がない人も申告が必要です。退職した年の所得が翌年度の保険料と軽減の判定に使われるので、退職した年に確定申告が必要になる場合も確かめておきます。年末調整を受けずに退職した人は、確定申告に前職の源泉徴収票を使います。手元にないときの対応は前職の源泉徴収票がもらえないときで説明しています。
今年度の所得が前年より減る見込みなら、条例による減免を相談する
減免の内容は市区町村の条例で決まるため、住んでいる地域で条件が違います。たとえば広島市では、条件の一つが今年度の所得見込額の基準です。単身世帯で240万円以下(2人以上の世帯は1人あたり48万円を加算)であることが求められます。そのうえで、失業や事業の休廃止で今年度の所得見込額が前年の70%以下になる世帯などが対象になります。
軽減の条件に当てはまらなくても「準ずる者」の減免を聞いてみる
船橋市では、倒産・解雇・病気などで離職した人なら、非自発的失業者の軽減の条件に当てはまらなくても減免を受けられる場合があります。たとえば、病気療養中で失業給付を受けられない人や、離職時に65歳以上だった人です。個人事業主や会社役員で、受給資格者証を取得できない人も含まれます。対象になるかどうかと必要な資料は個別に案内されるため、まず国保の担当課に連絡します。個人事業をやめた人は、国保の相談とは別に、フリーランス廃業の届出も期限までに済ませておきます。
軽減の届出書・減免の申請書の名前と提出先・提出時期
最初に国保の加入を届け出て、受給資格者証が届いたら軽減を届け出て、それでも払えないときに減免を申請する順番で進めます。
国保への加入は、国保に入ることになった日から14日以内に、世帯主が住所地の市区町村へ届け出ます。届書には、加入する人の氏名・生年月日・個人番号(マイナンバー)・資格を取得した年月日とその理由などを書きます。会社を辞めた人は、国保の加入と同じ時期に国民年金への切り替えが必要になる場合もあります。
非自発的失業者の軽減の届出書は、自治体によって名前が違います。
- 中野区: 「非自発的失業に係る国民健康保険料等の軽減届」。区役所2階6番窓口に出すか、郵送します。郵送では、受給資格者証の両面の写し・本人確認書類の写し・マイナンバー確認書類の写しを同封します。区は特定記録郵便か簡易書留での郵送を勧めています。
- 新宿区: 「特例対象被保険者等に係る届」。郵送する場合、マイナンバー確認書類の写しは不要とされています。
- 船橋市: 「特例対象被保険者等に係る届出書」。国保年金課・船橋駅前総合窓口センター・各出張所に、受給資格者証を持参します。手書きの仮発行の状態では受け付けられません。
提出時期は、ハローワークで受給資格者証または受給資格通知が発行された後です。書く内容は各自治体の様式に従い、中野区は記載例も公開しています。
減免の申請は、広島市の場合、納付期限の前日から数えて7日前までに出します。提出先は、納入通知書を送ってきた区役所保険年金課です。添付するのは、納入通知書と納付書、最近3か月の収入を証明するもの、預貯金を確認できるものです。収入の証明には、給与明細書・年金支払通知書・雇用保険受給資格者証などを使います。
所得の申告をしていない人は、「国民健康保険所得(無所得)申立書」を出します。広島市では区役所保険年金課へ郵送または持参し、日中に連絡がつく電話番号を書きます。収入がない人と障害年金などの非課税収入だけの人は、世帯主がマイナポータル(ぴったりサービス)からオンラインでも申請できます。障害年金が税金でどう扱われるかは、障害年金は非課税で確定申告も原則不要で確かめられます。

4つの方法を、対象になる人と申請の期限で比べる
どの方法も届出が必要で、期限や書類は自治体の案内で最終確認します。
| 方法 | 対象になる人 | 申請の時期 | 主な書類 | 根拠・窓口 |
|---|---|---|---|---|
| 非自発的失業者の軽減 | 離職日に65歳未満で、離職理由コードが11・12・21・22・31・32・23・33・34の人 | 受給資格者証の発行後。軽減は翌年度末まで | 受給資格者証または受給資格通知、本人確認書類、マイナンバー確認書類 | 国民健康保険法施行令第29条の7の2/市区町村の国保担当課 |
| 低所得世帯の軽減 | 前年の世帯の所得が基準以下の人(広島市の7割軽減は、給与所得者等が1人の世帯で43万円以下) | 毎年の所得の申告 | 確定申告書、市・県民税申告書、または所得(無所得)申立書 | 市区町村の国保担当課 |
| 条例による減免 | 失業・廃業・病気などで今年度の所得が減る見込みの人(広島市は前年の70%以下など) | 広島市は納付期限の前日から数えて7日前まで | 納入通知書、最近3か月の収入の証明、預貯金の記録 | 国民健康保険法第77条/各市区町村の条例 |
| 準ずる者の減免 | 受給資格者証がない人、離職時に65歳以上だった人など(船橋市) | 自治体の個別案内による | 自治体の個別案内による | 船橋市国保年金課など |
窓口へ行く前に手元にそろえておく書類
相談の前に次の書類を集めておくと、軽減と減免の両方をその場で確かめてもらえます。
- 雇用保険受給資格者証または雇用保険受給資格通知(離職理由コードの欄を確認しておく)
- マイナンバーカードなど、本人確認書類とマイナンバー確認書類
- 国保の納入通知書と納付書
- 最近3か月の給与明細書、年金支払通知書など収入の分かるもの
- 預金通帳など、預貯金の残高が分かるもの
よくある質問
Q. 自己都合で退職しても、非自発的失業者の軽減を受けられますか?
A. 対象になるかは、受給資格者証の離職理由コードで決まります。船橋市は、病気や介護などの正当な理由による自己都合退職でも、軽減を受けられる場合があると案内しています。コードが対象の番号(11・12・21・22・31・32・23・33・34)に入っているかを確かめてください。
Q. 非自発的失業者の軽減はいつまで続きますか?
A. 離職日の翌日が属する月から、その月が属する年度の翌年度末までです。途中で就職して会社の健康保険に入った場合は、国保の資格がなくなる日までになります。
Q. 退職して収入がない場合も、所得の申告は必要ですか?
A. 広島市では、1月1日時点で16歳以上の無収入の人も申告が必要とされています。申告がないと世帯の所得が確定せず、低所得世帯の軽減が受けられない場合があります。
Q. 65歳以上で退職した場合は、どうすればよいですか?
A. 非自発的失業者の軽減は、離職日に65歳未満であることが条件です。船橋市のように、離職時に65歳以上だった人を「準ずる者」の減免で扱う自治体もあるため、国保の担当課に相談してください。
まとめ
- 退職後の国民健康保険料は前年の所得で計算されるため、収入が減っても自動では下がりません。
- 会社都合などで離職した人は、受給資格者証の離職理由コードを確かめて非自発的失業者の軽減を届け出ます。
- 対象外の人は所得の申告と減免の相談を進め、減免は納付期限より前に申請します。
出典
- 中野区「非自発的失業者の方は国民健康保険料の軽減が受けられます」(更新日: 2026年3月27日) https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kurashi/hoken/hokenryo/hijihatsuteki.html
- 新宿区「非自発的失業者の国民健康保険料の軽減について」(最終更新日: 2025年4月1日) https://www.city.shinjuku.lg.jp/hoken/hoken02_000102.html
- 船橋市「国民健康保険料の軽減・減免のご案内」(更新日: 2026年4月1日) https://www.city.funabashi.lg.jp/kenkou/kokuho/002/p096564.html
- 広島市「低所得世帯の国民健康保険料の軽減」(更新日: 2026年5月18日) https://www.city.hiroshima.lg.jp/living/hoken-nenkin/1021143/1025566/1022691.html
- 広島市「国民健康保険所得(無所得)申立書の提出」(更新日: 2026年5月15日) https://www.city.hiroshima.lg.jp/living/hoken-nenkin/1021143/1025566/1022685.html
- 広島市「保険料の減免」(更新日: 2025年2月20日) https://www.city.hiroshima.lg.jp/living/hoken-nenkin/1021143/1025566/1003465.html
- 広島市「保険料を納めないと」(更新日: 2025年2月27日) https://www.city.hiroshima.lg.jp/living/hoken-nenkin/1021143/1025566/1003461.html
- e-Gov法令検索「国民健康保険法」第9条・第77条(2026年10月13日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/333AC0000000192
- e-Gov法令検索「国民健康保険法施行令」第29条の7の2(2026年10月13日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/333CO0000000362
- e-Gov法令検索「国民健康保険法施行規則」第2条・第3条(2026年10月13日確認) https://laws.e-gov.go.jp/law/333M50000100053
※本記事は制度の一般的な解説であり、個別の税務相談・税額の判断を行うものではありません。実際の手続きは、お住まいの市区町村の担当窓口、所轄税務署、または税理士にご確認ください。本記事はAIによる下書き支援を用い、上記の公的一次情報と照合したうえで公開しています(記事の基準日: 2026年5月18日)。

